口腔外科の主な病気と治療
親知らずの抜歯
口腔外科での身近な外来手術に「親知らずの抜歯」があります。「親知らず」は、奥歯の一番奥に生えてくる永久歯で、「第3大臼歯(だいさんだいきゅうし)」とも呼ばれています。一般的に生えてくる時期は10代後半から20代前半ですが、まれに30~40歳頃に生えてくる場合もあります。はじめから「親知らず」がない方や上下左右の4本が揃っていない方など、個人差があります。また、まっすぐに生えてくるとは限らず、斜めに生えたり、埋まったままだったりすることもあります。
「親知らず」は、必ず抜かなければならないというものではなく、痛みがない場合や周りの歯や歯列に影響がない場合は、無理に抜く必要はありません。抜歯が必要な症状としては、「歯ぐき(歯肉)の腫れや痛みを繰り返している」「頻繁に食べ物がつまる」「手前の歯や『親知らず』がむし歯になっている」「『親知らず』が他の病気の原因になっている」などが挙げられます。
親知らずの抜歯は原則、初回は検査と説明、痛みをとるなどの応急処置を必要に応じて行います。
親知らずの近くには、下顎の知覚神経(さわった感覚や温度などを感じる神経)や太い血管が存在します。ある程度はレントゲンにて位置関係が把握できますが、レントゲンだけでは心配な症例や歯の形が複雑な場合は歯科用CTで立体的に歯の形や神経、血管の位置を確認してから行います。
レントゲンやCTの結果を一緒に見ながら、抜歯の方法や抜歯後の経過、起こり得る偶発症について説明します。不安や心配が多いと思いますので、この時間にしっかりお話して、安心して抜歯の日に臨めるようにしましょう。
ここで同意書をいただければ、次回以降で日にちを相談して抜歯を行います。
また、親知らずの抜歯は腫れる・痛いというイメージが強いですが、当院ではしっかりと麻酔を行い、可能な限り侵襲が少ない方法で抜歯を行います。
また処置後に腫れを抑える注射をすることで、術後の腫れや痛みはある程度抑えることができます。
持病がおありの方、血が止まりにくい方の抜歯
一般的に抜歯は、むし歯や歯髄炎、歯周病などが進行し、歯の温存が不可能になった場合に行われます。近年の歯科医療では、可能な限り歯を残す潮流がありますが、一方で、抜歯を必要とするケースも少なくないのが現状です。
そんな中、持病や内服薬の影響で血が止まりにくい方も多いと思います。
以前は内服薬を調整し抜歯していましたが、今はほとんどの場合でお薬を今まで通り飲んでいただきながら抜歯をしています。
お薬を一時的に中止したり変えることによるお身体へのリスクの方が問題があるからです。
抜歯後出血に対しては、止血剤の使用、縫合、止血床(カバー)、歯茎の包帯などを使用します。
当院は、全身疾患がある方、血液サラサラのお薬を飲まれている方の抜歯も万全の設備と体制を整えて行っています。抜歯後の出血が心配な方もご相談ください。
口腔粘膜疾患
口の粘膜(舌・頬・口蓋・口底・口唇・歯肉など)に、炎症や腫瘍、アレルギー症状などが出現する疾患をいいます。口腔内の粘膜は刺激を受けやすく、常在菌も多く存在しています。そのため症状が変化しやすいという特徴がありますが、「できもの」、「ただれ」、「変色部位」などを入念に診断
し、適切な治療へとつなげています。
経過を見ていいものなのか、精査しておいた方がいいものか診断し、精査が望ましいと判断したものは、すぐに専門機関へご紹介し詳しい検査や治療が行えるようにします。
経過を見た方がいいと判断したものは、写真の記録や大きさなどを毎回確認しながら責任持って経過を見ていきます。
口腔内腫瘍
口腔腫瘍は、大きく良性腫瘍と悪性腫瘍に分けられます。良性腫瘍はその名の通り悪性度のないもので骨にできる歯原性腫瘍(エナメル上皮腫、歯牙腫など)、歯肉、粘膜、舌などに生じる非歯原性腫瘍(粘液腫、乳頭腫、線維腫、血管腫など)があります。一方、悪性腫瘍はいわゆる口腔がんです。こちらも骨にできる顎骨腫瘍と、舌にできる舌がん、歯ぐきにできる歯肉がんなどがあります。
歯肉口腔がんの発生要因は数多くありますが、喫煙や過度の飲酒、不潔な口腔衛生状態はもちろんのこと、不適切な入れ歯や尖った歯が、舌や頬の粘膜、歯茎に当たったままにしておくことも誘因とされています。
口腔がんのできやすい場所は舌・歯茎・頬の粘膜です。
当院では、メインテナンスの際にも異常がないかしっかり見させていただきますが、ご自身でもセルフチェックを行い少しでも気になることがあれば、診察を受けることが大切です。いつでもご相談ください。
口腔がんのセルフチェック
- 治りにくい口内炎や出血しやすい傷がある
- 傷やただれが広がっている
- 周りと色が違う所がある
- 口腔内に盛り上がったできものや固くなった部分がある
- 顎の下や首の脇に腫れがある
- 食べたり飲みこんだりすることがスムーズにできない
顎関節症(がくかんせつしょう)
顎の関節とその顎まわりの筋肉(咀嚼筋)の病気です。
上あごと下あごの動きがずれてしまったり、制限されてしまうことでお口の開け閉めに不自由が起こります。動きがずれる時に音がしたり、顎の関節や筋肉の負担が大きくなり痛みがでることもあります。
「口の開け閉めがしにくい」「顎が思い通りに動かず、食べ物が噛みにくい」「顎を動かすとカックン、コッキンといった不快な音がする」「痛みで頭や肩にも不快感が生じる」こともあります。
原因としては、食いしばり、悪い噛み合わせ、ストレスを含む精神的な要因、頬杖(ほうずえ)などの癖、解剖学的な問題などが考えられています。また、スポーツや力仕事などでも起こりやすいです。
症状は色々あり、主に4つの種類に分類せれています。軽度から重度まで個人差が大きく、それぞれに治療法は異なります。
主な治療はマウスピースになりますが、当院はお一人お一人の顎の動きに合わせてマウスピースを作成し、受診のたびに症状を見ながらさらに調整していきます。
重い症状の場合、放置すると進行して口が開かなくなってしまうことがあります。悪化すると治療期間も長くなってしまいますので、症状があればお早めの受診をお勧めします。
顎顔面外傷(がくがんめんがいしょう)
いわゆる「けが」です。
口まわりや口の中、顔面に負った外傷を顎顔面外傷といいます。切り傷から骨折まで程度も種類もさまざまです。「口や舌を切った」「歯が割れた・折れた」「歯が衝撃で抜けてしまった、ぐらぐらしている」「顎をうってずれている気がする、痛い」交通事故や転倒、打撲など原因は様々です。顎顔面外傷は機能面の問題もありますが、外見面でも問題になることがあります。負傷箇所にもよりますが、早期治療によって両面とも回復が望めますので早めの受診が大切です。
外傷はもちろん予約外でも受け付けておりますが、程度によっては総合病院などでの治療が望ましいこともありますので必ず事前にお電話をお願いいたします。
顎変形症(がくへんけいしょう)
上顎骨や下顎骨、あるいは両方の形や大きさ、位置異常によって、顔面の変形や咬合不全を起こしている状態をいいます。通常の矯正治療で対応できない顎変形症は、外科的矯正手術が検討されることがあります。治療は噛み合わせの改善に重点が置かれます。顎変形症で外科手術が必要な場合は、手術前後の矯正治療が保険適用となります。